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2023/04/11 11:32
四川省の気候と嗜好
四川料理といえば、中国四大料理の一つに数えられるもので中国では一般的に川菜(チュアンツァイ) と呼ばれていて、唐辛子や胡椒のような辣(ラァ)と呼ばれるヒリヒリするような辛さと、山椒のような麻(マァ)と呼ばれる痺れを感じるような刺激を効かせた麻辣味を強烈に加えた料理が親しまれています。
それは四川省が内陸部に位置し、盆地の中を揚子江が流れているので農業に適しているものの、水蒸気が立ちこめるような高温多湿な気候が影響していると考えられています。
中国には「蜀犬日吠、Huì quǎn pípá※(太陽に向かって吠える)」という言葉がありますが、これは曇天の日がとても多くて湿っぽく、太陽が出ることは希なことで、たまに晴れて太陽が出ると犬が驚いて吠えるということわざがあるほどです。※ 無知なために当たり前のことがらを怪しみ疑うことのたとえ。
夏は蒸し風呂のような暑さになり、昔から関節炎などで悩む人が多かったり、発汗作用のある料理を食べることですっきりさせて体調を整えたりしようとしたのかもしれません。
薬膳料理の知見に基づいて、紅油(辛油)や椒麻(花椒)、麻醤(すりごま)などの様々な調味料や香辛料、漢方薬、香味野菜や調味法を組み合わせて複雑な味を生み出し発展したため、その多彩さは「百菜百味(パイツァイパイウェイ、百の料理に百の味がある)と称されるほどです。
棒棒鶏は1920年代に楽山漢陽から四川省の成都に伝えられたとされている冷菜です。蒸し鶏を細切り(または細かく裂いて)して葱の細切りと一緒に盛り付け、芝麻醤(チーマチャン)、醤油、砂糖、酢、辣油(ラーヨウ)、ごま油、ネギ、生姜などで作った四川風のピリ辛ゴマだれを和えて作ります。(ちなみに四川では野菜を生で食べる文化がないので生野菜は添えません。)
何にでも良く合うゴマの俗説
素材の味を生かした蒸し鶏に、コクのあるゴマの風味に唐辛子の強い辛味を加えたタレを掛けるといかにも四川料理という雰囲気になるから不思議です。ゴマは様々な食べ物に良く合うし、香ばしい風味や油によって味を良くするという特徴があります。(“ごまかす”という言葉は、このような特徴が元になっているという俗説もあるほどです。)
ゴマの歴史
ゴマの原産地はインドまたはアフリカといわれていて正確なことは解っていないようです。中国でも紀元前3000年よりも前から栽培されていたということが解っていますが、本格的に広まったのは紀元前2年にインドから仏教が伝来してから以降のことです。中国では自国よりも西側にある国を“胡”というので、“胡(インド)”から来た麻の実に似た粒を胡麻(現在は芝麻)、コショウは“胡”から来た辛い(椒)ものを胡椒と呼ぶようになりました。
ゴマは当初、儀式用の油を採るのが主目的だったようですが、次第に食用としての利用方法が生み出されるようになり、ゴマやゴマ油がふんだんに使われるようになりました。
棒棒鶏 名前の由来
棒棒鶏が生まれたのは、数百年前の楽山漢陽(現在の眉山市青神県漢陽鎮、成都市の南)といわれているので楽山棒棒鶏とか嘉定棒棒鶏とも呼ばれることがあります。当時、楽山漢陽は交易によって栄えていたために様々な店があり、その中に棒棒鶏を提供する店があって人気があったようです。
この棒棒鶏という名前には少し変わった由来があります。
最も有名な説は、現地には漢陽鶏という鶏があり、雄鶏を屠殺したあと壺抜き(内臓を取り出すこと)してから洗い、丸鶏を麻縄で縛ってからお湯で茹で、火が通ったら冷まします。雌鳥は卵を産むので雄鶏を使うのですが、肉質が固いため身を骨付きのまま切り分ける前に棒で叩いて繊維を解してから手で裂いて芝麻醤入りの辛いタレと和えるという調理行程を料理名にしたというものです。この方法によって食感が柔らかくなり肉にタレが絡みやすくなって人気が出たのかもしれません。現在成都では骨付き鶏肉を茹でる方法と蒸し上げる方法の両方が存在しますし、火を通した肉を棒で叩く方法と、骨から外した肉を細切りにする方法が混在しています。
その他にも、昔は新年や祭日でしか食べられなかった茹で鶏を売る時の大きさの基準に木の棒を使ったとか、茹で鶏を包丁で切り分けるときに、包丁を持つ人と木の棒で包丁の“みね”を叩く人が居てリズミカルに作業している姿が特徴的だったとか諸説あるようです。
また、四川には味が異なる鶏肉の冷菜が他にも多数あります。中には麻、辣、酸(すっぱい味)、甜(甘い味)、鮮、咸(塩味)、香の全てを調和させて作る“怪味”という名前のたれも存在します。
なお、日本人にとって馴染みのある棒棒鶏は、トマトやキュウリ、クラゲなどと一緒に盛り付けられた蒸し鶏に辛くない胡麻だれを和えている料理だと思います。それは、昭和20年代後半に日本で棒々鶏を提供しようとした時に本場の調味料が手に入りづらかったのと、日本人向けに辛味を抑えた味付けにしたことが理由のようです。お陰で棒棒鶏は中華料理の中でも人気が高まり定着したとも言えます。
■商品紹介:棒棒鶏セット(3~4人分)